イケメンすぎてドン引き!
その時、
ブー、ブー、と低い振動音が部屋に響いた。
あたしか先輩のどっちかのスマホが鳴っていた。
それと同時にあたしはハッと我にかえる。
「ちょっと待った!」
「ぶほっ!」
あたしと先輩の顔の狭い隙間に両手を差しこみ、
綺麗なトスを上げるかのように、先輩の顔を打ち返していた。
げっ! やりすぎちゃった?
恐る恐る彼を見ると……。
先輩はいてーと顔をさすった後、
そのまま再び腕で顔を隠し、ころんと天井を仰いでいた。
「あ、痛かったですよね!? ごめんなさいっ」
「いや、俺こそ。ごめん。……ケータイ鳴ってるよ、たぶんお前の」
「……あ、はい……」
体を起こして、ベッドから降りる。
鞄の中を探ると、ラインの通知が来ていた。
『オブチさん、明日の放課後って空いてますか? 話したいことがあるんですが・・・』
あ……ノリ坊だ。
話したいことって?
急に改まった感じ。どうしたんだろう……。
さっき、職員室で再テスト片手にはにかんだ、彼の可愛い笑顔がふと頭の中に浮かんだ。
返事をするためにすっと指を動かそうとしたが。
――ちょっと待て。
最低じゃない? あたし。
今は先輩と一緒にいるはずなのに、
今ノリ坊からのラインを見た瞬間、すぐに頭がノリ坊のことに切り替わっている。
もしかして、こんな中途半端な状態だから、
『彼女になって』という先輩からの言葉を、自分の心の中に飲みこむことができないのだろうか。
先輩のキスを受け入れるのが怖かったのだろうか。
どこか後ろめたい気持ちでいる自分に対して、じわりと涙がこみ上げてくる。
いやいや、あたしがここで泣くのはもっと最低だ。
スマホの明かりがふっと消え、部屋の中は暗い青色を帯びていく。
先輩はベッドの上で黙りこんだまま。
「ご、ごめんなさい……!」
震える声でそう言って、あたしは先輩の部屋からダッシュで出て行った。
さっき、スマホのバイブが鳴って、目を開けた時。
先輩はふっと我にかえったような、色のない表情になっていたことに、あたしは気がついていた。