イケメンすぎてドン引き!


笑い声やヒソヒソ声で収集がつかなくなってしまった体育館内。



先生がため息をつきながら、

マイク越しに「環境委員会は下がって、次の委員会の発表に移ってください」と言った、


その時――。



「いけいけー!」とちゃらい大声が響く。



あ……スミスさんの、声?



その声の方へ視線を向けると、スミスさんが楽しそうに1人で拳を上げていて。



――あ、あ、あ!



そこを起点に、1人の背の高い茶髪のイケメンが、ステージへ向かってきていることに気がついた。



終業式の始まりには、縦横きれいだった生徒たちの列が更に乱れ、

まるで海が割れるかのように、彼を中心に人の波が開かれていく。



次第に女子たちのざわついた声が静まり返っていった。



嘘でしょ? 何で? 何で?



目の前で起きている事を信じていいのか分からない。


でも再び涙があふれて止まらなくなった。



「……っ何で? ひっく。うっ」



そのイケメンはずかずかとステージに上がってきて、あたしからマイクを奪う。


そして、


「泣きすぎだこのブサイク」


と、あたしの耳元で、マイクに入らない小声で囁く。



「……うっ」



めちゃくちゃ腹立たしい言葉なはずなんだけど、嬉しすぎて。



あたし美女じゃなくて良かった! 泣き顔もブスで良かった! とまで思ってしまうほど。



同時に、いつか彼に抱きしめられた時の温もりを鮮明に思い出した。


どくん、と熱い鼓動が体中に響き渡った。




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