イケメンすぎてドン引き!
「こいつも吉野クンのファンじゃねー? 聞いてよー、この前、2年だけじゃなくて1年もこの教室覗きに来ててさー。そういうのマジうざいんすけどー」
「ねぇねぇ、もしかしてわざと靴落として拾ってもらったとかぁ? すごいね~そこまでして吉野くんに近づきたいんだぁ」
目の前でケバ女とゆるふわ女が、悪意がなさそうにあたしに嫌味を吐く。
あー腹立つ。全っ然、違うのに!
ってか、みんなして吉野くん、吉野くぅーん、って。何だよオイ。
この上流階級を装ったビ○チを具現化したような女子どもが!
先輩も先輩だ。
これだからあまり3年の教室には近づきたくないんだよ!
ちくしょー。もうぶっちゃけてやる!
「違います! あたしは、ただ吉野先輩にパシリにさせられ……ふがっ!」
このクラスに先輩の悪態をバラそうとしたが、
急に彼の大きな手にあたしの口は押さえられた。
そのまま、先輩はあたしの耳元に口を近づけ、
「下駄箱で待ってて」
とこそっと囁いた。
「……っ!」
耳に軽く吐息がかかり、
くすぐったいような、気持ちがふわっと浮かび上がるような。
不意だったのか、
どきっ! とハートマークが飛び出しそうな勢いで、鼓動が高鳴った。
そして、先輩は、
「オブチさん、忘れ物届けにきてくれたんだよね? さすが副委員長~、助かったよー!」
と言って、あたしにまぶしすぎるイケメンスマイルを向けた後、
女子2名をつれて教室内に戻っていった。
「…………」
自分の教室に帰る途中、
さっきの先輩の囁き声が、頭の中で四方八方にバウンドしていた。