イケメンすぎてドン引き!
「俺にあんなくっさい靴ぶつけた罰、しっかり受けてもらうからな」
先輩はうねった茶髪をなびかせ、ドヤ顔をあたしに向けていた。
「……っ!」
ああ。
あたしは一体何を勘違いしていたのだろう。
古傷がちくりと痛む。
――確か、あれは中2の頃。
あたしは、サッカー部で超イケメンのクラスメイトに、純粋に憧れていた。
バレンタインの日、その男子の下駄箱にはぎっしりとチョコが詰まっていた。
あたしも勇気を振り絞って、
『いつも応援しています オブチより』と書いたメモを添えて、チョコをそこに突っ込んでみた。
しかし――
『おめーめちゃくちゃチョコもらってんじゃん。誰から誰からー?』
『ああ、これとかこれとか』
『うわー。ナカダに、ヤマグチに、オブチって……全員微妙な奴じゃーん』
『なー、今年は全部ハズレだなー。とりあえず皆で食うべー』
あたしは、たまたま通りかかったサッカー部の部室前で、こんな会話を聞いてしまったのだ。
チィーッス! その『微妙な奴』&『ハズレ女子』代表のオブチでーす!
なんて殴りこみに行けるわけもなく。
儚き恋心とイケメンへの幻想が崩れ去った記念日となったのである。