イケメンすぎてドン引き!
キーンコーンカーンコーン。
予鈴のチャイムが春の風に乗って聞こえてくる。
少しずつ開きだした桜の花が頭上で揺れていた。
「先輩、遅刻しちゃいますよ。また後で……」
そう言って、あたしは石段を駆け上がろうとしたが。
ぐいっ!
――ええええええ!?
突然、先輩に腕を引かれ、階段の下に体が引き戻された。
「お願い。今、聞いて欲しい」
若干うつろながらも、その目はしっかりあたしを見据えている。
ちょっと弱りかけている先輩の声、仕草、表情。
いつもとは違う雰囲気にあたしは完全に飲まれた。
ずるいよ、やっぱり格好良すぎる。
……見た目だけは。
そのまま、先輩はあたしの手を引き、
石畳の上を学校と反対側に向かって歩き出した。
このまま進むと、町の神社に繋がっている、もう1つの長い石段がある。
しっかりと握られているはずなのに、表面は痛くない。
先輩の固い手の感覚が、体に刻みこまれていくかのよう。
ひらり、と薄いピンクの花びらが頭上に一枚だけ舞っていた。