イケメンすぎてドン引き!
もう桜は散りかけていて、石畳の上は無数の花びらで彩られていた。
風が吹くごとに、そのピンク色があたしたちの足元で渦を巻く。
「……先輩、あたしボーリングのアベレージ150ですけど、いいですか?」
「うぅわ、マジ? だが次は負けねーよ」
あたしの質問に対して、先輩は一瞬だけひるんだ表情をした後、
ドヤ顔でそう答えた。
キーンコーンカーンコーン、と風に乗って予鈴チャイムが聞こえてくる。
『友達になって下さい!』
あの時は、何たわごと言ってんだこのイケメンは、と思ったけど、
先輩と一緒にいるの、楽しいかもしれない。
「やべー遅刻するー」と慌てている先輩と一緒に、
あたしは石段をダッシュで駆け上がった。
階段を上り終えると、いつもと変わらない景色なのに。
電線上に所狭しと並んでいるスズメも、
同じような家が並ぶ住宅街も、
県道を右へ左へびゅんびゅん行き交う車も、
ずっと無機質なものだと思っていたのに、
全てが『ここに存在しているもの』として精一杯息をしているように見えた。
早歩きの先輩に、小走りのあたし。
こいつやたら足なげーな、とちょっとイラつきつつ、あたしはその背中を追った。