とんだ勘違いから

エレベーターを降りたところで社長と他の役員たちとも顔をあわせることになって、

社長の先導の下私たちは後に続いた。




妹尾さんが

１課のプレゼンを思われる人に一言声をかけると

私たちはサイドですぐに対応できるように会議室を後にして隣の準備室へと歩いた。




たくさんの質疑応答のもと社長が了承したので役員たちを見送った。




そして、エレベーターで会議室へ戻ろうとするところに妹尾さんから呼び止められて


「川手さん、これさっきの会議にいた前田部長に渡しといて。

ちょっと急ぎなんだ。

よろしくね。」


と託られたので


「はい、わかりました、

１課の前田部長にですね。」


とちゃんと確認してから会議室に行くと、前田部長と有本課長が部屋に残っていた。


だから、前田部長に向かって


「あの、前田部長さんにこちらをと社長から預かってきました。」


というと、一瞬怪訝な顔をされた気がした。



初めて会う人にそんな風に見られたのは初めてだったので少し戸惑った。


すると近くにいた有本課長が


発表を見ていてくれましたか？とまるで私たちは会議中はお茶でも飲んで座談会でもしているのか、といやみに取れたので


「もちろん、発表を見ていましたよ、仕事ですから、あなたも私が何もしないでコネ入社だって責めるんですか？」


初めての人にはそう思えるのかもしれないと身構えて言ったつもりが


有本課長がアタフタ焦りだしたから


冗談ですって言うとほっとした様子で私に謝罪してきた。


別に怒ったわけじゃないのに、この人すごく根がいい人なんだろうな、と思っていると前田部長が


「川手さん、ありがとうございます。」


といって私の側へやってきた。

声を聞いたとき、前にも聴いたことがあるような気がしていた。


そして、妹尾さんに言われたわけじゃないけど急ぎって言ってたから



「大事な資料みたいなので今すぐ目を通していただきたいのですが。」


といってしまった。

どうしてももう少しだけ一緒にいたいとおもったから。