とんだ勘違いから
その紗綾もとい金田聡子から俺に昨夜電話があった。
そのことを須藤さんに話した。
すると
「また連絡があると思いますから、その時は焦らずに、金田の言い分を聞いてそれからこちらに連絡してください。
凶暴だというのは聞いていませんので、でも、念のため富田を張り込ませておきます。」
そう言って2人はかえって行った。
こんなことがあって、この週末は全く何も手につかなかった。
睡眠もろくに取れず、仕事に行けば何かに集中できるとそんなことを考えていた。
だから、月曜日駅に向かって歩く俺の肩をトンと叩いたまこに対しても
「ああ、おはよ。」
と一言。
「あの、どうかしましたか?」
と聞かれても
「いや、ただ...
あんまり寝てないんだ。」
としか答えられず、まさか結婚詐欺師から連絡があったなんて言えるわけがなく
「体調が悪いんだったらお家に帰られたほうがいいんじゃないですか。」
と心配してくれるまこを見て答えられたのは
「仕事してるほうが落ち着けるはずだから…」
これだけ。
「あっ、
あの、会社までご一緒させてもらっていいですか?」
と聞かれても
「ああ。」
とろくな返事もできない。最悪だ。
そこにさっそうと有本がやってきて
「部長、この前はご馳走さまでした。
川手さん体調はどう?」
こいつの底抜けの明るさにまこが少し笑顔を向けた。
三人で歩いていたが俺はほとんど話もしないで二人で話している。
その時前田聡子が俺に向かって歩いて来たから覚悟を決めた。
こいつと対峙するときが来たと。