とんだ勘違いから



須藤さんが電話に出ると


「富田が前田さん少し落ち込んでたみたいだと聞いたから、落ち着いてから連絡しようと思っていたんですよ。


被害届出しいただけますか?


あなたも被害を受けた一人なんですよ。


傷口を開くことになるかもしれませんが、盗みを働いたものには制裁が必要です。」


そう言われて


「わかりました。お願いします。」


と電話を切った。







いつかまこに話さないといけないと思っていたことだ。

もしかしたら、また転勤になるかもしれないな、なんて思いながら秘書課を訪れていた。







「前田部長どうしましたか?」


アポなしで社長室のある秘書課を訪ねたのだ、秘書課の女性が話しかけてきた。




「あの、社長にお話がありまして、いつでもよろしいのでお時間を作っていただきたいとお伝えください。」



そう言って自分の部署と名前を告げると秘書課を後にした。



その時ちょうど向かいから社長と秘書の妹尾さんが歩いてきた。




「あれ、前田部長いかがなさいました?」

目ざとく俺を見つけた妹尾さんが話しかけてくるので



「社長にお話がございまして、」


もうこうなったら直談判だ。



「あ、それならいま社長、お昼済ませて時間があるから応接室にどうぞ」


そう言ってそのまま促される。


社長の顔色を伺っても別に怒っている様子もない。





ありがとうございます、と言って応接室に通されると妹尾さんが席を外し社長と二人っきりになった。






「で、話とは何ですか?」



威圧感ある社長が話しかけてくるので、頭を下げながら



「お恥ずかしいことなのですが、結婚詐欺にあいまして、もしかしたら会社の名前が出るかもしれません。」


もちろん社長は驚いた顔をしている。


だから恥ずかしながらもことの経緯を話すと



「そうですか、わかりました。


それは昔のことなのですね。


あー、良かった。」


とても安堵した様子。




そこに「失礼します、お茶をお持ちしました。」




とまこがやってきた。









< 72 / 102 >

この作品をシェア

pagetop