とんだ勘違いから
「悪いな、まこと、


今は秘書じゃないのにこんなことさせて。」


と社長が言ってるのを見て


「前田部長に何したんですか?」


といきなり怒りだした。


「いや、世間話だよ。


ね、前田部長?」

とウインクをする社長に、はいと頭を下げるだけ。



心配そうに俺を見るまこに


「まこ、ただの世間話をしてただけだ。」


と安心させる。


「おや、


今まことのことを、まこって呼びましたね?」


「そうよ!何が悪いの?


好きな人を名前でよんでるだけじゃない。」


とまこが俺の掩護に入る。



「アハハハ、まこと、部長のことが好きなのか?」


うん、とうなずき


「前田部長は?」


と聞かれたので


「はい、女性として好きです。」


と返事した。



「そうですか。

おじさんが話してた相手はあなたかもしれませんね。」


と言った後


「発表されるかもしれないとおっしゃりましたが、それはこっちがどうにかします。

あなたも被害者なんですからね。




まことを幸せにしてください、こちらからお願いします。」



と社長から頭を下げられてこっちはもっと頭が下がっていった。



それをぼーっと見つめるまこが



「なんだかわからないけど、一見落着なのかな?」


と不安げだ。



すると社長が


「ああ、

大丈夫だ。


お前が心配することはない。



俺も早く彼女に会いたいな。」


と言ったかと思うと、彼女の頭をガシっと撫でた。



「ああ!


もう! 今日は綺麗にヘアをセットしてきたのに!」


ベーっと舌を出した社長はさっきの威圧感など全く感じさせない兄みたいな素振りだ。




そこで妹尾さんが


「社長そろそろお仕事が立て込んでますので。」


という合図で俺たちは応接室をあとにすることに


その時握手を求めた社長が俺の腕を取ると、まこの手もとって


「さあ、このフロアには誰もいないから、手を繋いで戻ればいい。


それじゃ仲良くな。」



そう言うと社長は社長室へ向かった。





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