とんだ勘違いから


「おはようございます。

妹尾さん、少しいいですか?」


「ん?

川手さんどうしたんだい?


社長ならもうオフィスにいるけど?」


「あ、そうですか。

忙しくなければ少し社長にお話があるんですけど。」


というと、


「それじゃあ、コーヒー運んでやってくれる?

多分今頃眠気と戦ってるはずだからさ。」


はい、というと

昨日は海外との会議で夜中起きてたらしいって言われた。


それなら家に帰って寝ればいいのに、って思うけど

家に帰るより会社で寝泊まりしてるほうが多いんじゃないかな。


ホント早く結婚して奥さん独り占めできるようになることを願っているんだからね。





「社長、コーヒーが入りました。」


「おっ、まことか。

珍しいな、コーヒー入れてくれるなんて。



どうした話があるのか?」


「うん。


あのね、私、部長のことが好きなの。



でもね、」



私がでもね、で止まっていると



「なんだ?

なんか問題でもあるのか?」


と少し目の下にクマを作った顔で心配そうに私のことを見る光信君に


「私、お父さんに彼のこと紹介したいと思ってるんだけど

どうしたら良いかな?」


私は両親に紹介することを躊躇してしまっている。


広陵さんは大丈夫って思っているけど

やっぱり前のようなことが起こるかもって頭の奥で吹っ切れないでいるから。

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