とんだ勘違いから
広陵さんがぎゅっと手を握ってくれる。
だから私は広陵さんを見てそれから海に目を向けた。
「久しぶり。
元気そうだな。
この前も一緒にいましたよね。
まこと、いや川手さんの彼氏さん。」
というと海が広陵さんのことを見た。
「海、えっと、佐々木さん、この人私の彼氏なの。
前田広陵さん。
広陵さん、こっちは佐々木海さん。
今は…
ケーキ屋さんやってるんだね。」
私は普通に話しているだろうか?
一体いつからこんなところにケーキ屋さんがあったんだろう。
「この前お父さんからお母さんのケーキを頼んだと聞いたところ。」
「ああ、浜野さんからの紹介で伺ったら川手さんがいて驚いたよ。
あ、少し座っていきませんか?」
すると広陵さんが
「いいえ、今から帰ってご飯なんでケーキは持って帰ります。えっと、いちごのショートとガトーショコラ、それからモンブランを。」
「はい、わかりました。
少々お待ちください。」
そしてケーキを包んだ箱をレジへ持っていく。
代を取ろうとしない海に広陵さんが
「それは困ります。」
と云ったので彼がレジにいる店員にこそっと話してから会計を済ませた。
「「ありがとうございました。」」
と二人に言われて私と広陵さんは店を出ると、私は
ふーっとため息をついた。