我 、君ヲ愛ス…っ⁉︎
マジですか?
ーーーー


「……ん」



目を開けると、見知った天井が真っ先に目に入った。



あれ、此処って私の部屋じゃん。



え、でも待って。
私は確か、奥社で倒れたはず……。



それなのに、なんで……



「……夢、だったのかな」



ふと、そんな言葉が口からついて出た。



奥社で梅の型が彫られたキーホルダーを見つけたのも、へんな足音を聞いたのも、あの優しそうな人に出会ったのも。



全部、ぜんぶ……私の夢。



「そう……だよね。あんなこと、現実じゃありえないし。夢、あれは夢!ユメ、ゆめ、夢‼︎」



半ば強引にそう暗示して、私はベッドから飛び降りた。



「ーー入るぞ」



それと同時に、部屋の戸が開かれる。



「ちょっ⁉︎か、勝手に入って来ないでっていつも言ってるでしょ‼︎」



「はぁ?だーかーらー、入るぞってちゃんと声かけただろ?」



「いやいやいやっ、普通は返事を聞いてから入るの‼︎それぐらい常識でしょ⁉︎」



「知らん」



ノックもなしにレディーの部屋にズカズカと入ってきた馬鹿は、私の従兄弟にあたる相馬 克仁(そうま かつひと)。



ちょうど隣りに住んでて、いわゆる腐れ縁という仲だ。



克仁の家は二人兄弟で、私達よりも三つ年上のお兄さんがいる。



ちなみに、名前は義之(よしゆき)さん。



相馬は私のベットに腰掛けると、持っていたジュースを飲みながら、



「それよりさ、お前……身体大丈夫なのか」



こともなげにそう聞いた。



「え?……いつも通りだけど、なんで?」



「なんでって……お前、まさか憶えてないのかよ。昨日、奥社で倒れてたんだぞ」



「っ……‼︎」



ーー奥社ーー



その単語を聞いた途端、僅かな痛みが頭をよぎる。



「……私が、奥社で」



「そう」




間髪入れずに頷く相馬に、私はなぜか肩が震えた。




「倒れてた……私が、奥社で」



思い出したくない記憶の扉を、こじ開けられる気がする。



「だからそうだって言ってるだろ⁉︎
……薄ピンクの浴衣着た奴が『誰かが倒れてる』って叫んでて……んで、たまたま其処に居合わせた俺が、此処まで運んできてやったんだよ」



一息で言い切ると、相馬は一気にジュースを飲み干した。






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