我 、君ヲ愛ス…っ⁉︎

「そんな……どうして」



『如何してとは……ああ、すみません。少し驚かせてしまいましたね』



男の人は眉を下げて笑うと、空中にあった枕をそっと手に取った。



まるで魔法……いや超能力を見ているかのようで、混乱を隠せない。



「貴方……本当になんなの」



あんなことが出来るなんて、この人……人間じゃない。




震える瞳で、もう一度男の人に目をやった。



枝毛とは無縁そうな長い漆黒の髪。



綺麗すぎるほどに整った顔立ち。



そして、凛とした佇まい。



目の前にいるのは、紛れもなく人間に違いなかった。



『……憶えて……いないのですね』



ポツリと、男の人が言った。



「ぁ……」



男の人は本当に悲しそうに笑うと、静かに膝を寄せて、私の方へ手を伸ばす。



何事かと目を瞑ると、待っていたのは頭を撫でられる柔らかで擽ったい感触。



あの時と同じ……優しくて、大きな手だった。



名前も知らない男の人なのに、私は何故か、その手を叩き落とそうという気は起きなかった。



『貴女が倒れた後、私は貴女の意識の中に入りました』



「意識のなか……」



オウム返しで問うと、また悲しげな笑みを返される。



その笑顔を見た途端、ツキンと心に何かが突き刺さる。



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