我 、君ヲ愛ス…っ⁉︎
『公美様……私を貴女の心に置いて頂けませんか』
突然、龍泉はそう言いだした。
『私には、如何しても守らなければならぬ秘事が御座います』
龍泉は、真摯だった。
目を逸らすことはせず、真に迫る勢いで私に訴える。
『……公美様は何の関係もありません。しかし、貴女が私を拒めば……今度はいつ私の存在を“見える”人が現れるか分からないのです』
彼の目の淵が紅くなっていた。
余程力を入れているのか、握りしめた拳は微かに震えて入る。
『ーーお願いします』
龍泉は、そう言って深く頭を下げた。
私は堪らなくなって、ベットから降りると龍泉の近くでしゃがみ込む。
「……顔を、上げてください」
『……』
それでも、龍泉は頑なに頭を下げ続ける。
「やめて……そんなことしたって、私は」
正直、龍泉の真剣な頼みに、“はい、いいですよ”と心良く二つ返事を返すほど、私は勇者ではない。
龍泉は生者ではない。
その事実だけで、頭が真っ白になる。
「……私は」
ーー出て行って欲しい。
「……」
だけど、言葉にはならなかった。
代わりに出たのは、小さな小さなため息だけ。
どうしても、龍泉の浮かべたあの悲しい笑顔が、私の心を締め付ける。
そして、気がつけば
私は首を縦に振っていた。