メガネと海と空の色
よく見ると雅人はバケツを持っていて。
その中には雑巾もある。
ブレザーを脱ぎ捨てて、シャツの袖を捲って。
ばしゃん! とバケツの水の中に腕を突っ込み、
水が滴る雑巾を絞る。
そして、何故か辛そうな表情で、机を擦り始めた。
「…消えねーなあ…」
「…水性ペンで落書きする馬鹿が居るわけないでしょ。
そもそも除光液も無しにマジックが落ちるとでも思ってるの?
「じょこーえき…? 職員室でそれ借りてくる!!」
「いいわよ、そのままで」
「でも!」
「先生に事情話して取り替えてもらうわ。
その方が早いでしょう」
教室がざわめいた。
当然だ。それは嫌がらせも同時に露呈してしまうのだから。