桜ノ華
「今日は勉強してるのか」
「南十字様…!」
次の日も、啓志は裏庭に来た。
どうしてと言いたいのに、
自然と隣に座るから言えなくなってしまう。
「物理か」
「…はい。次実験で…」
「わざわざ昼休みにまで予習するなんて、偉いんだな」
威圧的な話し方と低い声。
表情を見ていないと、皮肉に捉えてしまいそうだ。
誰もが憧れるその笑顔が、
自分だけに向けられているなんて夢だとすら思えない。
「南十字様こそ…」
「それだ」
「へっ」