桜ノ華
桜の日に
あれから数か月。
風の噂で、啓志の妻が亡くなったことを知った。
勇気を出して南十字の屋敷を訪ね、啓一郎と話をした。
そして、啓志が婚約破棄したいと啓一郎に頭を下げたこと、
啓一郎がそれを退けたこと、
そして今、それを後悔していることを含め、謝罪された。
望むなら屋敷に住んでも構わないと、
南十字の姓に入ってもいいと。
桜は断った。
この子と二人で、啓志との思い出を胸に生きていくと決めたから、と。
それでも認知くらいはさせてほしいと頭を下げるので、
南十字の姓を名乗ることにした。
―・・・
「出て行く?!」
「はい。地元に戻ろうと思います」
「そんなまた急な…」