桜ノ華
「南十字様と呼ばれるのは好きじゃない」
「……」
「下の名前で、呼んでくれ」
「そんな、恐れ多いっ…」
「俺は桜と呼んでいるぞ。そして俺がいいと言ってるんだ。
むしろそうするべきと思うが」
早口に言うのは、少し拗ねているからなのだろうか。
眉間に少し皺が寄っている。
「…啓志…さま」
「様はだめだ」
「…啓志さん…」
「…いいだろう」
満足そうに笑った啓志は、
抱えていた本を開いて読み始めた。