桜ノ華
もう、周りなんて見えない。
こちらを見つめて手を伸ばす啓志の元へ、
真っ直ぐに歩いて行く。
桜の歩みを阻むものは無い。
「…つつしんでお受け致します」
その手を取り、優雅に一礼して見せた。
微笑むと、微笑んでくれる。
ふたりのそんな様子に、抗議の声をあげる者はもう居なかった。
「さあ、入るといい」
成瀬川学園の生徒会室は最上階にある。
最上階の全体、ワンフロアが生徒会室となっていて、
桜は今、階段を上った先の扉の前に居る。
「ここを開けたら、生徒会室…なんですね」
「ああ、そうだ」
「緊張します…」