桜ノ華
「良かった…!」
元々手先は器用な方で、料理も例外ではない。
だけど誰かに振る舞うのは初めてで、
しかもそれが思い人だというのなら尚更緊張する。
心から安堵し紅茶を一口飲むと、啓志の視線を感じた。
「どうかなさいましたか?」
「君は何でもできるな」
「もう、何ですか急に…」
苦笑いを見せると、啓志も紅茶を一口飲んだ。
「ふと思っただけだ」
「…嫌ですね、"完全無欠の王"には言われたくありませんよ?」
いつもの仕返しだと、少し意地悪な口調で言ってみる。
「…俺は、"桜の君"らしくない君の方が好きだ」
だけど返されたのは、思わず顔を赤くしてしまうような言葉で。