桜ノ華







「桜、わかっているな」

「はい、お父さま」


淡い桜色の着物が、真っ黒の車内に映える。

今日は、生徒会の仕事が休みの日。

そして、婚約者との会食の日。


「行って参ります」

「くれぐれも粗相の無いように」

「はい」


車は桜だけを降ろし戻る。

三崎の御曹司の意向で、ふたりだけでの食事になったそうだ。


「…ふう、」


大きく息を吸って、吐いて。

気持ちを引き締めて、ホテルの中へと足を踏み入れた。



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