桜ノ華
「ようこそいらっしゃいませ、三条さま。お待ち致しておりました」
胡散臭いほど爽やかな雰囲気のホテルマンに連れられ、
VIP専用のラウンジに入る。
その更に奥にある個室に、彼はいた。
「三崎さま、三条さまがいらっしゃいました」
「お待たせ致しました。三条 桜と申します。
本日はどうぞよろしくお願い致します」
「ああ、ありがとう。下がっていいよ」
桜をエスコートしようとしたホテルマンを制し、
彼はチップを渡して微笑む。
桜もまた、にこりと笑んで会釈をした。
立ち去ったことを確認して、彼は桜に向き直り。
「今日はよろしく! ていうか、ごめんね!?
いきなりふたりで食事なんてことになって。
父がさ、男らしく決めてこい! って勝手に決めちゃってさ」
「…いえ。お会いできて嬉しいです、三崎さま」
「あああ、そんな堅苦しいのやめようよ…! あっ、ごめん! はい、座って!」
慌ただしく、決してスマートとは言えないエスコート。
桜は大人しく椅子に腰を下ろし、姿勢を正した。