桜ノ華
「…ふふ、しばらく会わなかったからでしょうか。
啓志さんが何だか素直ですね」
「ああ、暑さでおかしくなっているとでも思ってくれ」
「やだ、もう」
こうして過ごせるのも、あと少しの間。
生徒会はもうすぐ引退だし、そうなれば啓志と過ごせる時間は必然と減る。
そうすればすぐに冬休みに入って、
自由登校の期間に入って、卒業する。
時の流れと共に、啓志への思いも薄れていってくれればいい。
"好きな人と過ごした、僅かな間の綺麗な思い出"
くらいなら罪にはならないだろう。
―そう思っていたのに。