桜ノ華



「そうだ、桜」

「はい、啓志さん」


いつも通りの放課後のはずだった。


「三崎 颯介、知っているな」

「…はい。どうかなさいましたか?」

「おまえの婚約者だそうだが」


啓志の耳に入ることまでは想定していた。


「…はい。その通りです」

「三条への融資と引き換えというのは?」

「真実です」


淡々とした会話だった。

それもそうだ。ふたりの関係は恋人なんて甘いものではないのだから。



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