桜ノ華
ぺこりと頭を下げ、会長室に急ぐ。
「啓志さん、お呼びでっ…」
少し開いていた扉の隙間から身体を滑り込ませると、
すぐに視界が塞がれた。
「あ、の…?」
見えるのは、肩越しの景色。
大きくて硬い、男性の身体の感触。
「啓志さん…?」
抱き締められている、と理解するまでに少し時間がかかった。
恐る恐ると腕を啓志の背中に回し、様子を伺う。
「…ありがとう」
「え、」
「君はいつも、俺が気づけない物に気づかせてくれる。
俺が知らない物を教えてくれる」
「そんな…」
「感謝している」