桜ノ華
桜は、付属の大学の文学部に内部推薦で合格した。
啓志も、同じく付属の大学の経営学部に在籍しながら、
現在の南十字家当主である父について仕事を学ぶらしい。
そして、桜と颯介の縁談は着々と進んでいた。
「ごめんね、うちの親の意向で…」
「いえ」
桜の高校卒業に合わせて、籍だけは先に入れることになった。
逆らう術などないのだから、従うしかない。
啓志とのあの"約束"も、消えたものと思っていた年明け。
生徒会の仕事もなくなれば、啓志と会うことはなくなった。
冬休みが終わり、卒業式前最後の登校日となり、
自由登校の期間に入り。
会えなくなればなるほど想いは募るのだから、
まったく恋愛感情というものは厄介だ。
それでも、この気持ちを抱えながら、颯介と結婚して、生きていく。
その覚悟は既にできていた。