桜ノ華
そして迎えた卒業式。
『…この言葉をもって答辞とさせていただきます。
卒業生代表、南十字 啓志』
壇上に立つ凛々しい彼を見つめて、
ああ、これで最後だ、と感傷に浸る。
別れを惜しむ友人などいない。
式が終わってしまえば、向かう先は一つ。
雪の上、冷たさも寒さも気にならない。
いつかのあの日のように大の字に寝転がり、目を閉じた。
色々あった3年間。
特に、最後の1年間を振り返る。
憧れのあの人に近づけた。
その笑顔を隣で見ることができた。
思いを告げることができた。
思い残すことは、もうない。
「また寝ているのか」