桜ノ華
頭上から聞こえた声に思わず目を開けると、
愛しい人の顔があった。
ばっと起き上がり、確認するように見つめる。
「…啓志さん…」
「風邪を引くぞ。そんな薄着で」
そう言いながら桜の隣に座る啓志も、十分薄着だ。
「久しぶりだな」
「はい…」
「会いたかった」
「…私も、です…」
「縁談は進んでいるのか」
「…はい」
「そうか」
会話は途切れる。
そして思う。
ああ、やっぱり消えたのだ、と。
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