桜ノ華
卒業と共に、この夢のような瞬間も終わるのだ。
「桜」
「はい、啓志さん」
―「君の声は落ちつくな」
「出会えて、よかった」
―「名前を呼んでくれないか。君の声で呼ばれると、
自分の名前が好きになれる」
「私もです。啓志さん」
「この先どんなことがあっても、俺の言葉を忘れないでほしい」
「勿論です。忘れるはずがありません」
「…良かった」
とろけるような甘い笑みは、すぐに視界から消えた。
引き寄せられるままに、彼の身体に身を委ねる。