桜ノ華
「え、そんな…っ」
「こんな年寄りとの二人暮らしでもいいと言ってくれるなら、だがねえ」
朗らかに笑った彼女。
「名前を聞いてもいいかい?」
「…桜…です」
「ほう、綺麗な名前だ。じゃあ桜、仕事はどんなのがいい?」
「紹介してくださるんですか?」
「長年住んでるとね、ツテもできるってもんさ」
「ありがとうございます…!」
できるだけ啓志から遠い場所で、
可能なら一人で、ひっそりと生きようと思ってここに来たのに。
結局は人に助けられてしまうのだと情けなくも思うが、
今はそんなことも言っていられない。
それに、三条を知っている人がいることが嬉しかった。