桜ノ華



「え、そんな…っ」

「こんな年寄りとの二人暮らしでもいいと言ってくれるなら、だがねえ」


朗らかに笑った彼女。


「名前を聞いてもいいかい?」

「…桜…です」

「ほう、綺麗な名前だ。じゃあ桜、仕事はどんなのがいい?」

「紹介してくださるんですか?」

「長年住んでるとね、ツテもできるってもんさ」

「ありがとうございます…!」


できるだけ啓志から遠い場所で、
可能なら一人で、ひっそりと生きようと思ってここに来たのに。

結局は人に助けられてしまうのだと情けなくも思うが、
今はそんなことも言っていられない。

それに、三条を知っている人がいることが嬉しかった。



< 80 / 103 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop