桜ノ華
「あら、江波(えなみ)のおばあちゃん。そちらのべっぴんさんは?」
「今日からうちに住むことになった人さ。桜っていうんだ」
「あの、初めまして…! どうぞ、よろしくお願いします」
深々と頭を下げる桜を見て、女性は笑った。
「そんな堅苦しい挨拶いらないよ!
この辺はみんな家族みたいなもんなんだから。ねえ、おばあちゃん」
「ああ、そうさ。この人はね、そこの臼井(うすい)さんとこの奥さんだ。
海辺の定食屋やってるから、あんたの働き場所にもいいんじゃないかい?」
「定食屋…」
「あらなあに、この子仕事探してるの?」
「ああ、頼めないかねえ」
「お安い御用さ! あんた、何ができる?」
「あっ、えっと…一応、家事は一通り…料理や掃除は得意です」
「ふうん、身体は? 病気とかしてないかい?」
「…妊娠、してます…」
二人が目を見開いた。