桜ノ華
「あらまあ…! 父親は?」
「…いません」
黙って逃げてきたことが、今になって心苦しくなる。
「…大丈夫なのかい?」
"江波のおばあちゃん"が、桜の背を軽く叩いた。
「…はい。決めました、から」
桜の凛とした笑顔を見て、二人はもう何かを言う様子はなかった。
「そっかそっか! じゃあ、無理のない程度で働いてもらおうね。
今何か月? 検診とかちゃんと行ってるの?」
「たぶん、3か月とかで…検診は、すいません…行ってないです」
「あらー! だめよ、大事な身体なんだから!
保険証持ってる? 小さいけどそこに産婦人科あるから、今から行くよ!」
「は、はいっ…!」