桜ノ華

背を押され腕を引かれ連れて行かれた先は、小さな個人病院。


「うちの息子が産婦人科医でね。診てもらいなさいね」

「は、い…」


妊娠疑惑が浮上してから、初めての病院。

一人で産んで育てると決めて啓志の元を離れたけれど、
いざ直接「妊娠している」と診断されることは怖かった。


「…うん、順調だね。今3か月」

「…そう、ですか…」

「これからは定期的に健診に来てね。あと、役所で母子手帳貰うこと」

「はい」

「母の店で働くんだって？ これからよろしくね」

「…はい、よろしくお願いします」


雰囲気が颯介に似た、人当たりの良い青年だ。


「どうだった？」

「順調だよ。つわりが少し酷いようだから、気ー使ってあげて」

「よかったねえ！ こんな頼りない男だけど、腕はいいから安心してね」

「母さん…」