桜ノ華



そして、ああ、やはり遠くの人なのだと思う。

観衆には目もくれず颯爽と歩くさまには貫禄すら漂い、
熱い視線を送る誰もが彼の笑顔を見たいと思っている事だろう。

一人で感傷に浸っていると、ふいに啓志と目が合った気がした。


「…!」


勘違いかと見紛う程、本当に薄い笑み。

向けられたのは、自分。







―好きになってはいけない人だから

 憧れているだけでよかったのに



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