桜ノ華
それは冬のこと
今日は天気が良かったから、少し遠出をしてみた。
小高い丘の上から海を眺めてみたくなったのだ。
「んー…」
ぐ、と身体を伸ばして息を吸い込む。
お腹の底から振動を感じた。
「ふふ、気持ちいい?」
微笑んでお腹を撫で、海に視線を移す。
「もうすぐ会えるね。楽しみ」
身体が冷えてきたからそろそろ戻った方がいいかもしれない。
でももう少しこの空気を感じていたいから、
ゆっくり戻ろう。
そう思い振り返ると、そこには人影があった。
距離があるから顔は見えない。
だけどわかってしまった。
「…啓志さん…?」