桜ノ華



「…久しぶりだな、桜」


離れる前よりやつれただろうか。


「…どうして、ここに」

「君をずっと探していた」


距離が縮まる。


「出張から帰ったら、君がいなかった。屋敷のどこにも」


その視線に捕えられてしまえば、もう動けなくて。


「探して、探して…やっと見つけた。

迎えに来るのが遅くなって、すまない」


手を握られた。


「…帰ろう、桜」


もう、泣かないと決めたのに。



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