桜ノ華



「啓志さん…無事、産まれましたよ。女の子です」


病室に戻り、窓を眺め、そこにはいない人に囁く。


「名前を考えないといけませんね。

私ったら、無事に産まれてほしいってそればっかりで…

女の子か男の子かも聞いてないし、何も考えてなかった」


今更ながら抜けていたと苦笑する。


「…早く…会いに来てください…」


やはり体は疲れていたようで、すっと沈むように眠りに落ちた。




―・・・



「ほら、見て、椿。桜が綺麗に咲いてる」



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