Blackberry〜黒い果実〜
振り返らないようにするために、見つめるものが必要だった。


振り返っても、影を消してくれるような強い光が必要だったんだ。


「一葉」


そう呼ばれるたびに、彼の声色は私に染み渡り。


さりげない気遣いで差し出される手。
ふらつく私を支える両手。


触れられるたびに、私の身体は熱を帯びる。


もっとこの人の事を知りたい。
居酒屋を出るときには、そう思えるくらい私の気持ちは育っていた。

< 156 / 253 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop