Blackberry〜黒い果実〜
キュッと唇を結んで前を向き直す。


考えちゃダメだ。
そう自分に言い聞かせて、止まっていた足を前に運ぶ。


いつもなら止まるはずのない自販機の前で、動き出したはずの歩みが止まった。


自販機の光に照らされた塊。
横たわる人影。


乱れたスーツ、枕がわりに頭の下に敷かれた鞄。


明らかに酔っ払いだろう。
良くある光景。いつもなら立ち止まるはずのない歩みを、僅かに見えた横顔が止めた。

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