Blackberry〜黒い果実〜
ここで、
出逢わなければ良かったのかな。


それとも、
彼を受け入れなければ良かったのかな?


熱い雫は、顎から落ちるときにはすでにその熱を失い、噛み締めた唇はしょっぱい味がした。


残像を振り切るように走り出し、息を切らしながらマンションの部屋に飛び込む。
ドアを後ろ手で閉めると、力を失った膝は玄関の冷たいタイルに落ちた。


「ゴメンなさい」


誰に向かってでもなく呟いた言葉は、暗く寂しい部屋に吸い込まれる。
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