ストレス金社会
ストレス金社会
人間には誰しもストレスというものを抱えています。学校、会社、家族などのストレツサーによりストレスが溜まります。ストレスが溜まれば体調不良、うつ病、ひどい場合は自らの命を絶つ人さえいます。
人間はそのストレスを溜めないように趣味や運動をします。
しかし、ストレスは溜まる一方です。

ある日一人の科学者がふとこんなことを思いました。


「ストレスをお金に変えればストレスは溜まらないだろう。」


科学者は残された人生全てを託して遂に創りしたのです。


《ストレス金社会》


ようやく創りあげたその街で科学者は暮らしました。

ただ、一緒に住む人が居ないと思った科学者は事故で亡くなった妻と息子のクローンを創りました。

街を造り上げた科学者にとって朝飯前。

家族3人で過ごす毎日は科学者にとってすごく楽しく「ずっとこのままでいたい」そう思うほどでした。

その半年後、科学者は家族に見守られ永遠の眠りにつきました。

そしてその街は誰も知らない幻の街と化していったのです。



───30年後───

もうどこにも行きたくない。僕はもう誰にも必要とされてないんだ。

どこにいってもストレス溜まるだけだし、家に帰ってもお父さんもお母さんも妹のことばっかで僕のことなんか目もくれない。

お姉ちゃんだからって理由でなんで僕ばっかり責めるんだろう。
悪いのは美紀なのに。
全部押し付けられる。もう嫌だよ。

学校の友達も僕なんかいらないって思ってるはず。

こんな世界、なくなってしまえ。どうせならストレスなんか溜まらないような世界に行ってみたい。

「えるかちゃん!!」

あれ?あかりちゃん...。

「何してるの!?みんな心配してるよ?ほら、帰ろ?」

「やだよ...。みんな僕を必要としてないんだよ。」

そうだよ。きっとあかりも今だけ。

「そんなことないよ!心配してくれてるんだよ!?」


「...がう...」

「?」

「ちがう...違うんだよ...。違う、違う!違う!違う!!ちがう!違う!」

僕は発狂していた。

気が付くとあかりちゃんは泣いていた。

「そんなことない。私はえるかちゃんを必要としてるよ。」

泣かしちゃった。唯一の友達を。

「えるかちゃん!どこいくの!?」

僕はその場を離れた。遠く、遠くを目指して必死に走っていた。



ふと周りを見てみたら知らない場所にいた。

「公園...?」

殺風景な広場にブランコと砂場、滑り台があるだけの公園。

「元気?」

「え?」

どこからか男の人の声が聞こえた。

「ん〜、元気そうじゃないね。ストレス、溜まってるね」

ちょっとした茂みから若い身長の高い男の人が出てきた。

全身黒い服で綺麗な顔をしている。

「ようこそ。《ストレス金社会》へ。」

正直、何を言ってるかわからない。

「誰...ですか?」

「高坂彩希斗。ここの住人だよ。」

んー、よくわからない。ここの住人ってなに?

とりあえずこの人の名前がアキトっていうのはわかったけど後は全然わからない。むしろわかりたくないような...

「何から説明しよっかなぁ。えっと、まず最初にこれを渡しとくね。」

これは...

「手帳?」

そこには「鎌野えるか」と名前が載っている。

「そ!簡単に説明するとえるかちゃんのストレスがお金になるの。そのお金はこの街共通だからどこででも使える!好きなことができるんだよ。そしてこの街に入るか入らないかはえるかちゃんの自由。嫌だったらそれ返してね?」

アキトさんは僕に渡した通帳を指さしながら言った。

「えっと、まずひとつ。なんで私の名前を知ってるの?ふたつめ。ここはどこなの?」

疑問を最小限に絞ってこのふたつを質問してみる。

「ひとつめは最初からここにくる運命だったから。ふたつめはストレス金社会っていう街だよ。」

納得できない。

「で、入るの?入らないの?」

どうせもとの世界に戻ってもつまんないし少しだけ興味が湧いてきたしいっか。

「入り...ます。」

「よかった」

気味の悪い笑顔でアキトさんは笑った

「とりあえずは銀行に行こう。ちょっと遠いけど我慢してね?」

そういうとアキトさんは公園の出口に向かって歩き出した。

独りになるのが嫌だった僕は駆け足でアキトさんのところに向かった。

「いろいろ説明するけどわからなかったらなんでも聞いてね?」

そういうとこの街のしくみについて説明をしてくれた。

意味がわからなかったのが、ストレス金によるストレスはストレス金にならない。
ということ。

数十分歩くと銀行に着いた。

入ってるだけのお金を引き出すと200万st。

えーっと、このstってどの位の価値なんだろ...

「アキトさん、st ってどのくらいなんですか?」

「あ、そっか!円だと100万円だよ。二分の一って考えたらいいかもね!」

そ、そんなにストレス溜まっていたのか。

ここからどうしたらいいのかな...

「えっと...。どうしたらいいですかね?」

「とりあえずホテルか何かに泊まろう!」

え、その言い方だとアキトさんも...!?

「あ、俺は家に帰るから気をつけてね!またどこかで会おう!」

よかった。 のかな?

「ちょっとまって!どうしたらいいの!?」

僕の声を聞かずにアキトさんは行ってしまった。

後ろ姿、かっこいいな。

いやいや、そんなことない!!

とりあえずホテルにチェックインはしたけどすることがない。


やっぱ僕ってどこにいっても環境に馴染めないでストレスが溜まってしまう。

とりあえずお腹すいたなぁ。

100万円もあるから何頼もうか迷うけどここは僕の好きなホットケーキを頼もう。

数分してウェイトレスさんが何枚も積み重なってるアニメでありそうなホットケーキとホットミルクを持ってきてくれた。

「いっただきまーす!」

ホットケーキは大好きだけどこんなにおいしいホットケーキを食べたのは初めてでなんかお金持ちになった気分だ。

疲れもあってかその夜はぐっすり寝れた。



「やばい!遅刻...」

じゃないのか。夢だとは思ったけどホテルのベットにいるし昨日の食べかけのホットケーキだってある。

まだ困惑するけど慣れるかな。


一旦ホテルを出て街を散歩していたら少しだけど人がいる。

街っていうほどだし人はいるよね。


あ、洋服屋さんだ!

今着ている服を改めて見るとボロボロだし買っちゃおっかな。お金ならたくさんあるし。

「いらっしゃいませー」

店員の声を聞き流して自分の好きな服を選ぶ。

好きな服を、好きな分だけ。


「お会計8万6千円になります」

ちょっと買いすぎたかな。でも大丈夫!お金ならたくさんあるから。

「ありがとうございました」


その後も好きなことを楽しんだ。

カラオケ、買い物、食事。




ホテルにもどって所持金を調べてみた。

37万6千円。

こんなに使ったのかぁ。まぁでも大丈夫でしょ!

今日の夜ご飯はオムライスとパスタを頼んでたらふくたべて寝た。



プルルルルル

あれ?電話?

「もしもし...」

「鎌野様、宿泊代やサービス等、全て含めて28万円になっておりますが今晩はどうされますか?」

あれ、そんなに使ったっけなぁ。

でもストレスが溜まればお金なんかには困らない。

「大丈夫です。銀行でお金をおろしてきます。」

「かしこまりました。」

さてと。
どのくらい貯まってるかなぁ。


軽い足取りで銀行に着き、残高を確認してみた。

【残高 4千円】

あれ?おかしいな。

あ、そっか。ここにきてストレス溜まらなくなったもんね。

どうしよ...。とりあえず今日ご飯を食べなければ大丈夫かな。


ホテルに着くと空腹をごまかすようにすぐに寝た。


時計を見ると9時。
結構寝たなぁ。

あ、チェックアウトしなきゃ。


二日目に買ったカバンや服などをまとめてフロントに行きチェックアウトをした。

34万円。

目を疑ったけど今思えばエステとかのサービスを受けたからか。

【所持金 8万円】


お腹すいたし何かを食べよう。


タクシーを止めて近くの定食屋さんにおろしてもらった。

【所持金 7万6千円】

これとこれと、これください。

昨日の夜食べてなかったからかすっごくお腹がすいてる。早く来ないかなぁ。

お、きたきた!結構頼んじゃったなぁ。まいっか!いただきまーす!


ふぅ、お腹いっぱい。食べ過ぎたかなぁ。

「ありがとうございます。お会計3千円です。」

【所持金 7万3千円】


ま、まぁ大丈夫かな!それよりデザート食べたいなぁ。

そういえばずーっと行きたかったあそこのクレープ屋さん行ってみよ。少し遠いけどタクシー呼んだらいっかな。



「お会計 2000円になります。」

げっ!こんなに高かったかな。ま、いっか。まだお金はあるし。
なーんか全然お腹満たされない気がする。

よし、この際だしたくさん食べよ!
足りなくなったら銀行行けばいいしね!


――数時間後――

【所持金 0円】

「やばい...」

やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい

銀行に行ってもお金は貯まっていなかった。
こんなにストレスは貯まっているのに。

「なんで...」


なんでなの。ねぇ、アキトさん。
なんで。

なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで

あ...

『ストレス金によるストレスはストレス金にならない。』

このことだったのか。

でも、もうだめ。もう遅いよ。

ストレスが欲しい。ストレスが。あんなに嫌いだったストレスが欲しいよ。
なにか...できることはないかな...。ストレス...

気がついたら自分の周りは赤い液体が溜まっていた。右手にはいつの間にか持っていたナイフ。

よく見ると赤い液体は左腕から流れていた。

「血...」

その瞬間その場に倒れ込んだ。

久しぶりのこの感じ。背中がゾクゾクして嫌なことが吹っ飛ぶ。

「もう...いっか。死んでも...。」




スパッ




プシュゥー という音と共に意識が朦朧としてきて目の前が真っ暗になった。

一瞬、どこかで見たことのあるような後ろ姿が見えた。

「アキ...ト...さ...」

アキトさんが笑っているような気がした。

そこでえるかの意識は途切れた。

────────────

誰かが言いました。

『ストレスがお金になってくれればいいのにな。』

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