あなたと恋の始め方①
現実という壁
「本当に私が第一候補と言うことなのでしょうか?」
「ああ。今のところ坂上が第一候補だろう。でも、昨日、あの二人が来たのはそれを阻止するためだと思う。本社の一社員とはいえ、取締役も同行する視察に高見主任だけでなく、折戸までくるとなると何かあると思うのが普通だろ。それに、坂上にも二週間の期限をというからにはそれなりの目論見がないと言えない」
「え?」
「そうじゃないと静岡まで来ないだろ。さ、早くパソコンを立ち上げる。さっき、最新の研究結果を送っているから保存しておいてくれ」
「はい」
とんでもないことを平然と言いながらも何事もなかったかのように研究に戻った中垣先輩をみると平然と研究に励んでいる。でも、中々パソコンを前に固まっている私に視線を向けると鋭く瞳を光らせた。
「悪い話じゃない。フランス留学に行くとなると研究者としては箔も付く。坂上の場合、日本に帰国後は主任研究員になれるだろう。でも、女としてはどうかな。支社の小林はどうするかな。普通なら止めるか」
フッと視線を逸らしながら独り言のように呟く中垣先輩の言葉を聞きながら、私の心は揺れていた。昨日、小林さんと付き合い始めたばかりなのにこの急展開に気持ちがついていかない。頭の中で言葉にならない言葉が溢れそうだった。
「悩みます」
「悩むだろうな。でも、答えは二つに一つだろ。行くか行かないか。ただそれだけ。さ、俺は隣の研究室に入るから」
そういうと、中垣先輩は奥の研究室に籠ってしまった。
「ああ。今のところ坂上が第一候補だろう。でも、昨日、あの二人が来たのはそれを阻止するためだと思う。本社の一社員とはいえ、取締役も同行する視察に高見主任だけでなく、折戸までくるとなると何かあると思うのが普通だろ。それに、坂上にも二週間の期限をというからにはそれなりの目論見がないと言えない」
「え?」
「そうじゃないと静岡まで来ないだろ。さ、早くパソコンを立ち上げる。さっき、最新の研究結果を送っているから保存しておいてくれ」
「はい」
とんでもないことを平然と言いながらも何事もなかったかのように研究に戻った中垣先輩をみると平然と研究に励んでいる。でも、中々パソコンを前に固まっている私に視線を向けると鋭く瞳を光らせた。
「悪い話じゃない。フランス留学に行くとなると研究者としては箔も付く。坂上の場合、日本に帰国後は主任研究員になれるだろう。でも、女としてはどうかな。支社の小林はどうするかな。普通なら止めるか」
フッと視線を逸らしながら独り言のように呟く中垣先輩の言葉を聞きながら、私の心は揺れていた。昨日、小林さんと付き合い始めたばかりなのにこの急展開に気持ちがついていかない。頭の中で言葉にならない言葉が溢れそうだった。
「悩みます」
「悩むだろうな。でも、答えは二つに一つだろ。行くか行かないか。ただそれだけ。さ、俺は隣の研究室に入るから」
そういうと、中垣先輩は奥の研究室に籠ってしまった。