あなたと恋の始め方①
「その人どんな人?」


 小林さんをどのように表現したら一番伝わるだろう?小林さんの真っ直ぐで綺麗な瞳を思い出し、フッと自分の顔が染まるのを感じた。さっきの川田さんではないが、これは同じように惚気ている。でも、引き出しをどんどん開けるように私の中の小林さんへの思いが溢れすぎる。


「優しくてとっても爽やかな人です。一緒にいると胸の奥が熱くなって、もっと傍に行きたいと思うし、でも、遠くで見つめているだけでも幸せで…一緒にいると私は幸せなんです」


「え?それって私が知っている人?まさか、静岡支社?本社??」


「いいじゃない。坂上さんの顔を見たらその人のことを好きってわかるんだから。でも、折戸さんは坂上さんに本気って感じだったから驚いたわ」


 興奮する川田さんを抑えてくれた住田さんの言葉に少しホッとはするものの、自分の顔が小林さんのことを考えるだけで緩むのは恥ずかしい。一応プロポーズされたのだから折戸さんには好かれていると思う。でも、そんなことはこの二人の好奇心に油を注ぐだけ。


 勝負下着→ヒモパン→折戸さんの彼氏説。


 私にはこっちの方が驚きだった。どうしてそんな風に思われるのか不思議だったけど、水曜日の夜に一緒にいるとこを見られたからなら仕方ないかもしれない。


「ヤバイ。もう帰らないと怒られる」


 そう言ったのは住田さんで、壁に掛かった時計の針は私が研究室を出てから既に30分は過ぎていた。ヤバイのは私の方だった。


「私も帰ります。あの…楽しかったです」



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