あなたと恋の始め方①
 時間は10時を回っている。


 必死に頑張ったから徐々の遅れは取り戻しつつあるけど、それにしても使いすぎた頭がオーバーヒート気味でそろそろ今日の仕事を終わらせないといけない時間になりつつある。時計の針を巻き戻したいくらいに時間が足りない。それでも、今日はここで終わらせることにした。


 消えた分は一気に頑張って打ち込んだので、復元出来た上に、数字の間違っているの見つけたから、フリーズしてしまったのは運が悪いけど、見つめなおすことが出来たのはよかった気がする。


「中垣先輩はまだされますか?」


「いや。もう帰るかと思っている。久しぶりに自分の部屋に戻らないと部屋の空気が澱む。坂上はどうする?帰るならセキュリティを掛ける」


 空気が澱むほど自分の部屋に帰ってないという中垣先輩の唖然としながらも、これだけ研究室に寝泊りしているからそれもそうかと思う。白衣を脱いでいる中垣先輩を見ながら私も帰ろうと思った。


「私も帰ろうかと思っています。消えた部分は追いつきました」


 そういうと、中垣先輩はそれは当たり前という風に頷くと、また自分のパソコンの前に座る。そして、また研究を始めた。帰るのは一時中断らしい


「気をつけて帰れよ」

「はい。片付けが終わり次第帰ります」


「ああ」



 片づけを終わらせて研究室を出ると、途端に大きな溜め息が零れ、頭の中が可笑しくなりそうだった。明日は小林さんとの初めてのデートなのに今日の川田さんと住田さんとの話は強烈過ぎた。


 

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