あなたと恋の始め方①
 緊張していたけど、あのまま優しく抱きしめていて欲しかったりもするから、自分の気持ちが分からなくなっていた。恥ずかしいのに触れたいなんて矛盾もいいとこ。高校生デートが物足りなくなっている私は我が儘だと思う。恋愛経験が薄い私のことを思い、小林さんが提案したのが『高校生デート』。



 それなのに私はもっと小林さんに近づきたいと思っている。


 手を繋いだまま歩き出した小林さんは私の心の動きには気付かない。私が『大学生デート』をしたいと思っているなんか気づきもしないだろう。優しく肩を抱かれた時に感じたのは自分が大事にされているということ。そして、もっと小林さんに触れたいと思う私がいるということ。この気持ちがもっと大きくなったら…。私はどうなるのだろう。見当もつかないくらいに想像不可能だった。


「ここに入ろうか?」


 アトラクションの時間まで時間があったので、さっきの約束の通りにカフェに入ることにした。でも、店の前には人が並んでいる。他の場所に移動した方がいいのか、それともここで大人しく待った方がいいのか分からなかったけど、小林さんがここがいいというならそれでいい。私は小林さんの誕生日のお祝いをしたいだけ。


「待ちますけどいいですか?」


「うん。次にどこに行くかを考えながら一緒に待とう」


「はい」


 店の前にはいくつかの待つ人用の椅子が置いてあり、小林さんはその椅子に私を座らせた。
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