あなたと恋の始め方①
「小林さんは座らなくていいのですか?」


「俺は結構鍛えているし、大丈夫。美羽ちゃんは大丈夫?」


「大丈夫です。でも、キツくなったら言います」


「もちろん。楽しみに来ているのだから、無理はしないでくれた方が俺も嬉しい」 


 順番を待って席に着けたのはそのカフェに入ってからしばらく経ってからで、一人だったら疲れてしまいそうな待ち時間も二人でいると楽しかった。待っている間にガイドブックを見て、次はどこに行くかを決めたり、さっきのショーの話をしたりとアッと言う間だった。


「大変お待たせしました」


 私と小林さんの前に来たキャストは可愛らしいエプロンドレスを着た女の子で窓際のテーブルに案内すると、革張りの豪華なメニュー表を差し出したのだった。革張りのメニューの中の写真は豪華そのものだった。どれもこれも美味しそうだし、可愛いし目移りする。こんな時の決断力のなさは半端なく、自分でも情けなくなってしまうほどで、メニュー表を見ながら私は悩み続けていた。


「何にする?」


 美味しそうな写真が並んでいて悩んでしまうのは女心だとも思う。最終的に二つに絞った。でも、その二つから選ぶのにまた苦労する。色々なケーキの中から選ぶのはイチゴのショートケーキを真ん中に置いて、フルーツやアイスクリームでデコレートしたのか、チョコレートケーキを真ん中に置いてデコレートしたものかなのだけど、悩みに悩む。


 イチゴも美味しそうだし、チョコレートも美味しそう。

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