あなたと恋の始め方①
「何を食べようか?美味しいといいんだけど。」


 私が頷くと、また私の腕を取ると自分の腕に絡める。今日、何度もこうして腕を組んでいるのに、組むたびにドキッと胸が飛び跳ねる。何件か並んでいる中で私と小林さんが選んだのはエスニックの店だった。エスニックとは言ってもホテルの中にあるような店だから、私が知っているようなものとは全く違う。


 それにしても入った店がエスニックなんて…。和風でもなく洋風でもなく中華風でもなく…エスニック。


 
 店に入って顔を見合わせてフッと笑った。


 タイミングが良かったのだと思う。私と小林さんが入ると満席になったし、案内されたテーブルは広く。最後の最後にいい席に案内されたという感じだった。この店に入ったのは店の雰囲気が良かったからだけど、入ってみて思うのはここも恋人同士が多いということ。さっきのように周りを気にしないでラブラブするような人はいないけど、しっとりとして大人の恋がそこにはある気がした。


 薄暗い店内には楽しそうに話す声が聞こえていた。かなりの遅い時間なのに、この店は緩やかな時間が続いている。


「何にする?」


 メニューを見ながら小林さんが私に聞いてくる。メニュー表にはたくさんの美味しそうな写真が並んでいる。そのどれもが美味しそうで悩んでしまう。さっき、遊園地の中で色々食べたからそんなにお腹は空いてない。でも、メニューを見たらどれもこれも食べたくなる。
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