あなたと恋の始め方①
「俺の気持ちが?」


 そんなことはない。小林さんが私を思ってくれる気持ちは素直で真っ直ぐに私に伝わってくる。だから迷惑なんてことはない。私が思ったのは周りもとっても幸せそうな雰囲気に包まれているからそれを邪魔したら行けないと思っただけ。


「違います。周りの方も幸せそうだから、邪魔しちゃいけないかと思って」


 小林さんはクスクス笑うと、急に立ち止まり、私の方に顔を寄せ…。耳元に少しだけ色香を増した声で囁く。その甘い囁きにさっきまで落ち着いていた心臓が簡単に飛び跳ねた。


「美羽ちゃん。好きだよ。大好き」


 耳元がくすぐったく、そして、顔がまた熱くなる。耳元だけが熱くなるんじゃなくて身体中が火照っていくのを感じた。たった『好き』というだけの言葉の威力を心が感じる。顔が赤いのを気付かれたくなくて、私はギュッと小林さんの腕に抱きつくと小林さんはフワッと私の頭を撫でてくれた。


 子どもをあやす様な手の動きに甘えてしまう。


 その手の温かさを感じながら私が少し上を向くと、覗き込む小林さんの優しい瞳と視線が絡んでしまう。でも、何も言ってくれなくて、ただ、私の次の行動を待っている。


「…。私も。」


 それだけ言うと、小林さんはちょっとイジワルな瞳で私を見つめた。そして、声は優しいのに形のいい唇から零れるのは瞳と同じくらいのイジワルな言葉。
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