あなたと恋の始め方①
 小林さんはさっさとコンビニを出て行ってしまった。正直、小林さんの気遣いにホッとする。あの避妊具の箱の横に、ジュースと一緒に替えの下着やストッキングを入れる訳にはいかない。ホテルのアメニティが揃っているだろうから買うものは限られたものだけだった。下着にストッキングとかは必需品だしそれと、私が買ったのはチョコレートとスポーツ飲料だった。


 緊張しすぎている時は甘いものが欲しくなる。研究している時も甘いものが欲しくなることが多いから、研究所の机の中にはチョコレートが完備されている。甘いものが好きと言うよりは疲れているから身体が欲しがるだけ。今日は仕事じゃないのに、仕事以上にカロリーを消費している気がするからチョコレートでカロリー補給が必要だと思った。


 私の心臓が何度も飛び跳ね、苦しくなるばかり。チョコレートの魔法にお世話にならないといけないほど、今日の私はテンパっている。そして、スポーツ飲料はこの喉の渇きを潤すためで、今の私にはどちらも必要不可欠なものだった。


「お待たせしました。すみません」


 買い物が急いでレジを終わらせてコンビニを出ると、そこには携帯を片手に店の外にいる小林さんの姿が見えた。メールでも打っていたのだろうか?



「大事な用事ですか?」


「ちょっとしたことだよ。高見主任から。それにしても買い物が早いね。もう終わったの?」


「はい。買いたいものは全部買ったので、大丈夫です。高見主任は何の用事ですか?」

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